街歩きが好きな人は多いと思います。
特別な目的がなくても、ただ歩くだけで気づくことは意外と多いものです。

一方で、GIS(地理情報システム)というと、
行政や研究、業務用途の少し堅い世界を想像する人も多いかもしれません。

実はこの二つは、かなり相性が良い組み合わせです。
街を歩くという行為は、GIS的に見ると「現地観測」に近い性質を持っています。


街歩きは「点・線・面」の連続

GISでは、地物を大きく次の三つに分けて考えます。

  • 点(施設、店舗、交差点など)
  • 線(道路、通路、川、動線)
  • 面(街区、公園、商圏、地区)

街歩きをしていると、無意識のうちにこの三つを行き来しています。

「あの店が気になる」というのは点の発見ですし、
「この道は歩きやすい/歩きにくい」は線の評価です。
「この辺りは雰囲気が違う」と感じるのは、面としての認識です。

GISは、こうした感覚を後から整理するための道具とも言えます。


歩かないと分からない情報がある

地図だけを見ていると、分からないことは多くあります。

  • 坂のきつさ
  • 視界の抜け
  • 歩行者の多さ
  • 音や匂い

これらはデータ化しにくく、
実際に歩いて初めて実感できる要素です。

一方で、「どこで感じたか」を位置として記録しておくと、
後から地図上で振り返ることができます。

街歩きとGISの組み合わせは、
主観的な気づきを空間情報として残す作業でもあります。


なぜ人が集まるのかを考える

街歩きをしていると、
理由は分からないけれど人が集まっている場所に出会うことがあります。

ベンチがあるわけでもなく、
特別な施設があるわけでもないのに、
なぜか人が立ち止まっている。

こうした場所をGISで見ると、

  • 複数の動線が交差している
  • 少しだけ広がった空間になっている
  • 日陰や風通しが良い

といった要因が重なっていることがあります。

街歩きで得た感覚と、
地図上の構造を重ねて考えることで、
「なぜここなのか」が少しずつ見えてきます。


歩行ルートは最短ではない

GISで経路を計算すると、
多くの場合「最短距離」や「最短時間」が出てきます。

しかし、街歩きで選ばれる道は、
必ずしも最短ではありません。

  • 信号が少ない
  • 歩道が広い
  • 景色が良い
  • 知っている道で安心

こうした理由で、人は遠回りを選びます。

街歩きの記録を重ねていくと、
「計算上は不利だが、実際にはよく使われる道」が浮かび上がります。

これは、机上の分析だけでは見えにくい情報です。


街歩きは仮説づくりに向いている

GIS分析というと、
最初からデータを揃えて結果を出すイメージがあります。

街歩きは、その前段階に向いています。

歩きながら、

  • なぜここに店が多いのか
  • なぜこの道は避けられているのか
  • なぜこの公園は使われていないのか

といった疑問が自然に生まれます。

その疑問を、後からGISで検証する。
この流れは、とても健全です。


街歩きインデックスという試み

こうした考え方を具体化した例として、ジオテクノロジーズと東京大学・麗澤大学の研究者による「街歩きインデックス」の取り組みがあります。

https://geot.jp/pressrelease-20240305/

この取り組みでは、人流データを用いて、歩行者が実際に選択している道順を分析し、「好んで選ばれる道」をスコアとして可視化しています。最短距離ではなく、結果として選ばれた経路に注目する点が特徴です。

スコアが高い場所ほど、多少遠回りでも選ばれやすい。言い換えれば、「居心地が良く、歩きたくなる街路空間」である可能性が高いと解釈できます。

このような指標があることで、まちづくりを行う際に「この小路があることが実は人の滞留に貢献していた」「この道路の魅力は活かそう」といった、まちづくりを考える際の共通認識、補助線として活きてきます。

まとめ

街歩きは感覚的な行為ですが、
GISと組み合わせることで、
その感覚を整理し、共有できる形にできます。

一方で、GISだけを見ていても、
街の実感はなかなか掴めません。

歩いて、感じて、地図に戻る。
この往復が、街を理解する一つの方法だと思います。