引っ越し先を探しているとき、「この辺りは、どんな人が住んでいるんだろう」と気になることはありませんか。駅前に新しいマンションが建ったり、お店が増えたりすると、まちの様子もずいぶん変わって見えます。
その変化をもう少し知りたくて、人口や地域のデータを開いてみる。ただ、ここで困るのが、情報が少ないことよりも「色々出てきたけれど、結局どこを見ればいいの?」ということだったりします。
今回は、地域の情報を調べるときに、私が大事だと考えていることを整理してみます。ツールの機能を順番に並べるより、「このまちの何を知りたいのか」から考えてみましょう。
「人口を知りたい」の中にも、いくつか意味がある
例えば、駅の近くでお店を開きたい場合です。駅の周りに住んでいる人が多いのか、通勤で駅を使う人が多いのか。この二つは似ているようで、見たいものが違いますよね。
住宅地に暮らす人を相手にするお店なら、周辺の人口や世帯構成が気になります。仕事帰りに寄ってもらうお店なら、駅から住宅地へ向かう道や、夕方の人の動きも見たいところです。どちらも「人が多い場所を知りたい」という話ですが、住んでいる人の数だけでは、後者には答えられません。
私はこれまで、行政が持つ都市のデータの整理や、シェアサイクルの利用データを交通計画に活かす仕事に関わってきました。同じ交通の話でも、施設がどこにあるかを知ることと、人がどのように移動しているかを知ることでは、必要になる情報が変わります。
地域を調べるときも、「人口」「交通」「子育て」といった分野名から、もう少しだけ踏み込んでみると探しやすくなります。「子育て世帯が多い地域なのか」「保育園まで歩いて通えるのか」。ここまで言葉にできると、人口を見るのか、施設の場所を見るのか、その先の調べ方も見えてきます。
市全体の数字と、家の周りの様子
引っ越し先の話に戻りましょう。「子どもが多いまち」と紹介されていたとしても、市内のどこでも同じように子どもが多いとは限りません。駅前のマンションが増えている地区と、昔からの住宅地とでは、年齢構成も変わってきそうです。
市の特徴をつかみたいときには、市区町村単位の数字が便利です。そこから住む場所を考える段階になったら、町丁目などの小地域や、地図を四角く区切ったメッシュのデータを見てみます。同じ市の中の違いが分かると、不動産サイトで見ていた候補地の印象も少し変わるかもしれません。
このサイトの小地域人口の記事では町丁目ごとの人口と高齢化率を、メッシュ人口の記事では同じ大きさの区画にそろえた人口分布を扱っています。見慣れた地名で地域をつかむなら小地域、行政の境界をまたいで駅の周りを眺めるならメッシュ、という見方もできます。
ただ、子どもの人数が分かっても、保育園に入れるかどうかは別の話です。そこは自治体の募集情報や施設ごとの状況を調べる必要があります。人口の地図は、暮らしやすさの答えが全部載っている地図ではありません。「この辺りはどうだろう」と、次に調べたい場所や内容を見つけるために使うと、無理がないと思います。
知りたいことが決まったら、見る場所を選ぶ
地域のデータを見られるサイトは、かなり充実してきました。私自身、データを扱う仕事をしてきた立場として、個人でもこれだけの情報に触れられることは面白いなと感じています。入口としては、次のような使い分けができます。
| 知りたいこと | まず開く場所 | そこから見ること |
|---|---|---|
| 地域の人口や産業の特徴をつかみたい | RESAS | 関心のある地域を選び、近隣地域や過去の時点と比べる |
| 数字の出典や、もう少し細かな地域の値を調べたい | e-Stat | 統計名、調査年、集計されている地域の単位を確かめる |
| 都道府県の状況を、複数の政策分野から見たい | Japan Dashboard | 人口だけでなく、関心のある分野の指標も見てみる |
| 家や駅から通える施設を知りたい | 自治体の施設案内・地図 | 所在地に加えて、開館時間や利用対象も確認する |
最初からデータをダウンロードして、加工して、地図を作る必要はありません。公開されているグラフで知りたかったことが分かれば、それで十分です。逆に「この駅から歩ける範囲で集計したい」「施設の場所と人口を重ねたい」となってきたら、GISを使う意味が出てきます。
同じ人口でも、国勢調査の数字と、自治体が毎月公表する住民基本台帳の数字では、数え方や時点が違います。隣の市と比べるつもりが、別々の年の数字を並べていた、ということは避けたいところ。比較するときは、表の名前と年を一緒に控えておくと、後から迷いにくくなります。
地図に出てこなかったことも、調べるきっかけになる
もう一つ、データを扱ううえで気にしているのが、地図に点がない場所の見方です。
例えば施設の地図を作って、ある地域に何も表示されなかったとします。本当に施設がないのか、それとも使ったデータに載っていないだけなのか。新しくできた施設がまだ反映されていないこともあれば、そもそも対象に含まれていない種類の施設ということもあります。
行政のデータを整理する仕事では、自治体によって持っている情報やデータの仕様が違うことも扱ってきました。「データがある」というだけで、すぐ同じように比べられるわけではないんですね。だから、地図ができた後も、気になる場所は元の案内や現地の様子と照らしてみたいと思っています。
私が別に運営している「地図のワークブック」でも、標高データを地図にする記事を書いています。地形の違いが色で見えると、普段通る道や、住んでいる場所を眺め直したくなります。数字や地図を見て終わるより、身近な場所に戻ったときに「あれはこういうことだったのか」と思えると面白いですよね。
調べた後に、何が一つ決められそうか
地域の情報を調べ始めると、つい色々なグラフを見たくなります。それ自体も楽しいのですが、引っ越し先を考えていたはずが、いつの間にか市全体の人口分析をしていた、となると少し遠回りです。
「次の休みに、この駅の周りを歩いてみよう」「気になっていた施設の利用条件を調べてみよう」。そこまで具体的になれば、データを見る前より一歩進んでいます。
私がCityWideで紹介していきたいのも、そうした使い方です。まちのことが少し気になったときに、データも横に置いて考えてみる。そのための入口や、調べてみて面白かったことを、引き続きまとめていきたいと思います。


