まちリサーチ #04|選挙とGISで見る地域の動き

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選挙というと、投票率や得票数に目が向きますが、その前に「場所」をめぐる仕事がいくつもあります。投票所はどこにあるのか、掲示場をどこに設置するのか、現地で変更があったらどの記録を直すのか。地図が役立つ場面は、結果の分析だけではありません。

今回は、選挙事務の中でGISをどう使うかを考えてみます。単に地図に点を置くだけでなく、その点から必要な情報にたどり着けるか、というところに注目したいと思います。

掲示場の場所が分かっても、仕事は終わらない

ESRIジャパンが2008年に紹介した宇治市の事例では、約300か所のポスター掲示板の位置を紙の都市計画図で管理していました。設置を依頼する際には、それとは別に住宅地図や写真、管理者の連絡先などを用意する必要があったそうです。

そこで位置情報をGISにまとめ、周辺地図や写真と合わせた帳票を作る形に変えています。出典:選挙ポスター掲示板設置業務へのGIS活用。

この事例で気になるのは、地図を電子化したこと以上に、ばらばらの記録を同じ場所から確認できるようにした点です。場所は分かるけれど写真は別のフォルダ、連絡先は別の台帳…という状態では、地図があっても探す作業は残ります。

一つの場所に、何を結び付ける?

例えば掲示場なら、番号を共通の手がかりにして、地図・現地写真・作業状況をつないでみます。下の図は、その考え方を示したものです。

掲示場番号地図位置・入口現地写真設置場所・撮影日作業状況設置・確認・撤去
地図上の場所と、現地で使う記録を同じ番号でつなぐ。

地図上の点を少し動かしただけでは、写真や作業記録まで更新されたことにはなりません。反対に、写真を撮り直したのに古い位置図を配ってしまうことも考えられます。だから、どの記録が同じ掲示場のものか分かる番号と、いつ確認したかが大事になります。

また、毎回すべてを作り直すより、前回の記録を引き継ぎながら、移設や廃止などの変化を確認できる方が使いやすそうです。GISを入れるなら、地図の見栄えと同じくらい、次に担当する人が迷わず更新できるかも考えたいですね。

投票所への近さは、円だけで分かる?

投票所の配置を考えるときも、地図は役立ちます。ただ、投票所を中心に円を描いただけでは、そこへ行きやすいかは分かりません。

例えば川の向こうに住んでいる場合、直線では近くても橋まで回る必要があります。施設の敷地まで着いても、使える入口が反対側にあれば、さらに歩きます。坂道や横断する道路、公共交通を使う場合の時間帯も気になるところです。

まず住んでいる場所と投票所を地図に置き、次に実際に通れる道を見る。そして、入口や案内の分かりやすさを現地で確かめる。地図で一度に全部を判断しようとするより、地図から確認すべき場所を見つける使い方がよさそうです。

この考え方は、街歩きとGISの記事で扱った、距離と歩きやすさの違いにもつながります。

地図上で近いことと、接したことは違う

選挙と位置情報を扱った研究として、兵庫県赤穂市長選挙を対象に、候補者の選挙運動のGPS記録と有権者への調査を組み合わせた研究があります。三浦麻子ほか(2017)「地方選挙における有権者の政治行動に関連する近接性の効果」です。

この研究では、選挙運動への接触と空間的な近さを区別し、好感度や投票行動との関係を分析しています。位置の記録と、人に尋ねた結果を組み合わせている点が興味深いところです。

近くを通ったという位置の記録だけでは、相手がそれを見聞きしたかまでは分かりません。地図の線がどれだけ細かくても、その線が表しているのは記録された移動です。人の認識まで同じものとして扱わず、知りたいことに合った情報を組み合わせる必要があります。

地図から、次の確認につながるように

選挙に関わる情報を地図にすると、場所同士の関係が見やすくなります。ただ、点や線が並んだだけで、仕事や分析が完了するわけではありません。

掲示場なら写真や作業記録を確認する。投票所なら実際の道や入口を確かめる。人の行動を考えるなら、位置の記録に加えて、本人がどう受け止めたかを調べる。場所が分かった先に、何を確認できるかが大事なのだと思います。

GISというと難しい分析を想像しがちですが、まずは今ある地図と台帳を一緒に見て、「同じ場所の情報を探すのに、何度も別の資料を開いていないか」を考えてみる。身近な仕事の中にも、地図を使う入口がありそうです。

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