QGIS実践問題 #01|将来推計人口を用いた医療圏人口の分析

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本記事では、これまでに扱ってきたQGISの操作をもとに、より実践的なテーマで分析を行います。

今回は、将来推計人口データと医療施設データを用いて、医療施設ごとの医療圏人口の変化を分析します。単に地図を作成するだけでなく、QGISで集計した結果をExcelに出力し、医療施設ごとの将来人口の変化を把握してみます。

今回のお題

今回のお題は次の通りです。

医療施設3箇所について、2025年・2035年・2045年・2055年時点の医療圏人口を算出してください。そのうえで、以下に答えてください。

問1)2025年から2055年での生産年齢人口の減少数が最も大きい医療機関はどこか?
問2)2035年時点で高齢者人口が最も多い医療機関はどこか?

分析条件

分析にあたっての詳細な条件を記載します。

  • 生産年齢人口は「15~64歳人口」、高齢者人口は「65歳以上人口」とします。
  • 医療施設から半径1kmを医療圏とみなします。
  • 医療施設は自由に、任意の3箇所を選択してください。
  • 人口集計は総どり方式で構いません(面積按分は行わなくてよいです)。
  • 分析結果はExcelにて、表や折れ線グラフを用いて人口変動を表現してみましょう。

模範解答

先に、本実践問題の模範解答を示します。

今回は例として、広島県内の病院を3つ選びました。誤解を避けるため、対象病院はA病院・B病院・C病院としています。いずれも地域の核となる病院です。

作成した図表から、次のことが分かります。

  • 問1)生産年齢人口の減少が最も大きいのはC病院
  • 問2)2035年時点で高齢者人口が最も多いのはA病院

やってみよう

それでは、実際に作業してみましょう!

今回はデータの取得からQGISでの加工、Excelでのグラフ作成までの一連の流れを扱います。本記事は実践問題としての位置づけのため、細かい操作説明は適宜、過去の演習記事を参照しながら進めてください。

使用データ

今回使用するデータは以下の2つです。いずれも国土数値情報から取得できます。

事前のデータ整形

まずは、取得したデータをQGISに読み込みます。将来推計人口メッシュと医療機関データをQGIS上に表示すると、以下のようになります。

今回は3つの医療施設に絞って分析します。任意の3施設を選んでも構いませんが、ここでは病床数が多い医療機関に絞って分析することにします。医療機関データの属性情報を確認し、病床数を表す項目(P04_008)を使ってフィルタを設定します。「病床数が700より大きい」を条件とした結果、3つの医療施設を絞り込みました。今回はこの3つの医療機関を題材として扱わせていただきます。

次に、医療施設から半径1kmの医療圏ポリゴンを作成します。半径1kmのバッファを作成するためには、距離計算に適した座標系に変換しておく必要があります。

そのため、医療機関データを対象地域に応じた平面直角座標系に変換して保存します。作業方法の詳細は、過去記事「QGIS演習#02|座標系の変換」をご覧ください。

座標系を変換したら、医療機関から半径1kmのバッファを作成します。作業方法の詳細は、過去記事「QGIS演習#02 | バッファ作成」をご覧ください。

この後、医療圏ポリゴンと将来推計人口メッシュを重ね合わせ、医療圏ごとの人口を集計します。

この処理を行うためには、医療圏ポリゴンとメッシュデータの空間参照系が一致している必要があります。そのため、前処理の最後に、メッシュデータも医療機関データと同じ座標系に変換して保存します。

なおメッシュデータを保存する際には、必要な範囲だけに絞って出力しておくと、その後の処理が軽くなります。メッシュデータを保存する際には「領域(現在:レイヤ)」をチェックし、「キャンバスの領域」を指定し、画面に表示されている範囲のみを出力します。

これにより、元のメッシュデータ(下図のピンク色)のうち、キャンバス範囲に含まれる部分だけが新しいメッシュデータ(下図の緑色)として保存されます。

人口算出

ここまでで、分析に必要なデータの準備ができました。今回の演習で集計する項目は以下の8項目です。

項目内容
PTB_20252025年 男女計15~64歳人口
PTC_20252025年 男女計65歳以上人口
PTB_20352035年 男女計15~64歳人口
PTC_20352035年 男女計65歳以上人口
PTB_20452045年 男女計15~64歳人口
PTC_20452045年 男女計65歳以上人口
PTB_20552055年 男女計15~64歳人口
PTC_20552055年 男女計65歳以上人口

これらの項目について、医療圏ポリゴンごとに人口を「属性の空間結合」で集計します。今回は、総どり方式で集計します。ここでいう総どり方式とは、医療圏ポリゴンに重なるメッシュの人口をそのまま集計する方法です。

集計対象の項目として、先ほど確認した8項目を指定します。また集計方法は合計(sum)を指定します。

処理を実行すると、各医療圏について、生産年齢人口と高齢者人口の将来推計値が集計されます。今回は3つの医療機関なのでそこまで処理が重くなることはないかと思いますが、処理が重い場合は、事前にジオメトリインデックスを作成しておくと、処理が安定しやすくなります。もし処理が重たい場合はジオメトリインデックスの作業を事前に行いましょう。

Excelに出力する

次に、QGISで集計した結果をExcelに出力します。

レイヤを右クリックし、「エクスポート」から「名前を付けて地物を保存」を選択します。形式には「MS Office Open XML spreadsheet [XLSX]」を指定します。

この方法で保存すると、属性情報をExcel形式で出力できます。

Excel上で集計表とグラフを確認することで、医療施設ごとの人口構造の変化を比較できます。

折れ線グラフでは、各医療施設の生産年齢人口・高齢者人口が、2025年から2055年にかけてどのように変化していくかを確認できます。折れ線グラフで可視化することで、人口が減少しているのか増加しているのか、また医療施設ごとに変化の傾向が異なるのかを視覚的に把握できます。

一方で、問1・問2に答える際には、グラフだけでなく集計表の数値も確認します。問1では、2025年と2055年の生産年齢人口を比較し、その差が最も大きい医療機関を確認します。問2では、2035年時点の高齢者人口を医療機関ごとに比較し、最も高齢者人口が多い医療機関を確認します。

このように、グラフで全体の傾向を把握し、表の数値で具体的な差を確認することで、より正確に結果を読み取ることができます。

発展課題

余裕があれば、以下にも取り組んでください。

  • 面積按分を用いて医療圏人口を推計する
  • 半径1km圏だけでなく、半径3km圏でも同様の分析を行う

まとめ

今回は、将来推計人口データと医療機関データを用いて、医療施設ごとの医療圏人口を分析しました。

QGISは地図を作るだけでなく、空間的な条件にもとづいてデータを集計し、その結果をExcelなどの他のツールで活用することもできます。

今回のように、施設の周辺人口を将来時点ごとに比較することで、

  • 将来的に施設の需要が高まりそうな地域
  • 生産年齢人口が減少し、担い手不足が懸念される地域
  • 施設ごとの人口構造の違い

などを考えるきっかけになります。今回は医療施設を対象としましたが、同じ考え方は、福祉施設、学校、子育て支援施設、公共交通拠点など、さまざまな公共施設の分析にも応用できます。

QGISを使って、地域の未来を読み解いてみましょう!